とある幅接ぎ材の話

工務店

幅接ぎ材の割れの修理を行いました。

先日OBの方より「天板の幅接ぎ材が割れている」と連絡があり、さっそく伺いました。

幅接ぎ材とは10センチ幅程度の挽き板を剥ぎ合わせたもので、見た目や特徴も無垢の一枚板にかなり近いといえる材料のため、弊社ではカウンターの天板などに使っています。

今回はその何枚かの幅接ぎ材が冬の乾燥で伸び縮みしてしまい、割れが発生してしまったというもの。割れが大きかったのはキッチンと玄関収納の2か所で共にタモ材。フローリングが伸び縮みをして隙間があいてしまったり…というお話はよく聞きますが、幅接ぎ材が大きく割れている、というのは正直なところ初めてだったので驚きました。無垢材を使う上で避けることのできない伸び縮みのようすとその補修方法を紹介します。

まずはキッチンカウンターから。

左側7ピースだけが全体的に縮み、「左側7ピース、右側1ピース」の二つに割れてしまいました。端部は割れとムクリ癖がついてしまい、強制することは難しそうです。埋め木や樹脂の注入も考えましたが、夏に湿気を含んでタモ材が伸びた際にその動きに追従できるのか疑問です。

T大工から案があり、端金を使って天板と下台を切り離した後、再度接着する方法をとることに。

ゆっくりと端金を締めていくと途中で「バチッーン!」という大きな音と共に天板と下台が離れました。それぞれピースを下台としっかり固定し、裏あて材なども使って接ぎ合わせます。

完成が見えてきてほっとしたT大工。非常に不自然な笑顔を浮かべます。
最後に仕上げの作業をして、一晩端金をかけさせてもらい完了です。

1階では、階段下の玄関収納の割れを補修しました。

こちらは2階とは違い、場所が手狭で端金やちぎりなども使えないため、樹脂を使って埋めることに。以前会社で購入した「knot filler」という工具を使います。動画サイトなどで調べると作業の様子なども見ることができます。

余談ですが、新築工事の際、すぐ脇にある玄関の式台の割れにはちぎりを用いました。

knot fillerを使います。

まずは色選びから。10色近くあるので仕上がりをイメージしながら慎重に選びます。

樹脂を注入して専用のスクレーパーですき取ります。スクレーパーは幅が広いので、塗装を傷めないように鑿ですき取るのも良いかもしれません。サンドペーパーでぼかし、クリア塗装をして完成です。湿気を持ち材料が膨張した際にどういった動きをするのかわからない部分もありますが、2か所とも無事終了です。

今回の訪問でお施主様から「木の家に住むので、こういったことはある程度は承知していた。」というお話をいただきました。

弊社では普段から木材をよく触れているため「木材とはこういうものだ。」ということを念頭に仕事をしていますが、「天板が割れるなんて欠陥以外の何物でもない」というのが世の一般的な感覚だと思います。弊社でも割れを防止できるよういろいろと工夫を凝らしているわけですが、それでも追いつかない、予想できないことはまだあり、お施主様の木材への理解やその付き合い方にただただ感謝した、というお話でした。

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