伊礼 智氏の建築の原点
建築家 伊礼智氏が、自分自身の生まれ育った沖縄の住まい・文化について、沖縄の歴史等を交えながら、自分自身の子供の頃の体験・経験も含めて、まとめられた本です。子供向けに書かれた本ですので、総ページ数も50ページ程であり、平易な文章で写真・イラストも多く、読みやすい本です。
建築家の中でも、伊礼氏は私が一番好きな建築家であり、マイホームの設計・建築の際にも、非常に強く影響を受けています(マイホーム建築を依頼した工務店も伊礼氏と多くの協業をされています)。
伊礼氏の建築の特徴のひとつとして、”曖昧な空間・境界を大切にする”というものが挙げられるのですが、本書を読むと、それが沖縄の家の特徴である、スージー(路地)、ヒンプン(屏風)、アマハジ(雨端=軒下)などが原点となっていることが分かります。
伊礼建築には、ゆるく閉じながらも外に向かって常に開いている、外からくるものを常に拒まず・受け入れて取り込み、活用するような雰囲気を感じていたのですが、それは、沖縄の言葉である「テーゲー=適当、だいたい、いい加減」に通じるところもありますし、常に外の文化に対して畏敬の念を感じながら、拒まず受け入れて活用してきた、沖縄の方の遺伝子のようなものも関係していたのかもしれないなとも思いました。
沖縄の伝統的な家を通してみえる、沖縄の歴史・文化・考え方、そして過去と未来。加えて、伊礼氏の建築に流れるルーツに想いを馳せるのには良い本だと思いますし、勉強になります。
特に伊礼建築が好きな方には、一度読んでみることをおすすめします。
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