火と水と木の詩 吉村順三著

書籍

住宅は、設計の基本

目次
1 私はなぜ建築家になったか
2 修業時代
3 日本での設計活動
4 建築家の役割
5 一問一答
6 夕食会にて
巻頭巻末写真 南台の家

この本は、1978年11月11日に開催された吉村順三氏の建築講演時の講演会、質疑応答、夜の懇親会でのお話を集録し、その中から特に興味深い内容をまとめられたものです。目次の通り、吉村氏がなぜ建築家になったのか、どのような想いで建築家として仕事をなされてきたのか、今後の建築家・建築業界にどのようなことを思われているのか、幅広く知ることができます。

マイホーム建築にあたって、私が強く影響を受けた伊礼智氏、中村好文氏等も、その建築の源流は吉村順三氏に繋がっており、どのような方なのかを知りたくなり、読んだ本です。

120ページほどの本ですが、吉村氏の設計に対する想い、思考、建築家として大切にすべきことなどが端的な言葉で表現されており、非常に参考になりました。また、「住宅は設計の基本であり、設計は住む人を知ることから始めるべきであり、日本に建てる住宅であるならば、日本の伝統、日本の自然から学ぶべきである」という吉村氏の強い想いが、次の世代の建築家の方々に脈々と受け継がれていることがわかりました。

また、巻頭巻末には吉村氏の自邸である「南台の家」の写真が掲載されており、時を経てもなお、凛とした佇まいで、非常に美しい住宅だと思います。

吉村順三氏の建築思想、日本住宅の源流に興味がある方は、一読されることをおすすめします。

以下、読んでいてグッと来た吉村氏の言葉を列挙しておきます。

  • 本当に誠意を持って造った物は、本物だという感じを得ました。
  • ソロバンをはじいて出来た家というのは、ちっともこちらにピンとこないと言うか、生き生きしていないという気がします。
  • 単純なものの方が、美しいと感じました。
  • 建築というのものは、土地に生まれたものであり、そこで出来たものであるから、その地で見なければ、結局はだめだという気がしたのです。
  • 住宅は設計の基本。
  • 建築の面白いところは、人間の顔が皆、違うように、いろんな人がいるから面白いんです。
  • いくら大きなビルを造っても、中の人のことを考えていない。その人を考えるということは、その人の生活を考える訳です。
  • 建築家というのはとにかく建物を建てて、決定的にあるスペースを専有して、そしてそこに建物ができるのですから、その社会的な責任は重大だと思います。
  • 僕は新聞に出ている建売住宅のプランを見るたびに、人間が度外視されているような気がします。それは何故かというと、利益の言葉から、利益のソロバンからデザインされているのであって、人の為にデザインしているのでは無いからです。
  • やっぱりいい形というのは、自然から学ぶよりしょうがないと思います。
  • 建築というのは、昔の人の知恵、それをいかにして新鮮にしてゆくかということが、デザインだと思います。
  • 私は物の形のバランスとかは自然から、住宅のあり方というものはやはり昔のものから学ばなくてはならないと思います。
  • 建築は日本の土の上に建つ物ですし、日本人が住む訳ですから、基本的にはやはり日本の伝統というもの、日本の自然というものから学ばなくてはならないと思います。
  • これからの日本の建築家のあり方について。やはり日本の気持から出たものをつくるべきでしょうね。つまり簡素でありながら美しい、というものなどを考えてですね。新しいことは、そのなかで考えて行くべきであって、決して向こうの真似をするとか、西欧の考えでするのではなくて、日本の気持でやる、ということが大切ではないかと思います。そのためには、日本の気持を養うということも大切でしょうね。最近はヨーロッパやアメリカの建築を見に行くことが割合簡単にできるようになっていますが、その前に、自分たちの住んでいる日本の、長年にわたって風土と文化によって培われてきたさまざまな建築から学ぶことが必要なのではないでしょうか。その上で、欧米の建築からそれぞれのよい影響を受け、新しいオリジナルなものをつくって行くべきだと思っています。

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